産経新聞の26日の「主張」は妥当である。とくに重要な部分は、
「日本は「台湾は自国領」とする中国の立場を『理解し尊重する』としているが、『サンフランシスコ講和条約では台湾への領土権を放棄したのみで帰属先は触れていないため、台湾の帰属については発言する立場にはない』と主張してきた」のを、福田は胡主席と会談した際に、変えずに鸚鵡返しをすることだ。
しかし、上旬に訪中した高村外相は、相手に迎合した。胡主席から、台湾名による国連加盟についての住民投票に反対の意向表明を頼まれ、余計な一言「安心してほしい」とまで付け加えて請合った。こうした自縄自縛は、米国の現在の対中融和策を横目にして、先行があると「安心して」口走ったのであろう。だが、日本の安全保障に何等益しない発言であった。
この一言で胡主席はしてやったりであるが、高村は日本の外相としての初歩的な資質のないことを露呈した。
米国の利害と日本の利害の違いは、急いだ田中訪中の際の結果にも明らかである。中国の一人勝ちで、米ソは面目を失った。いろいろと後解釈はあるものの、内実は田中の国内政情における自分の利害計算を優先した結果のものであった。田中と一心同体であったのは大平正芳外相。
対ソでは、北方領土問題への取り組みでソ連を硬化させ後退させた。対米では、キッシンジャーが田中らの裏切りと激怒したことが、情報公開で近年明らかにされている。ニクソンも深く憤ったようだ。対中カードの切り札の一つが、勝手に北京に飛んでいってしまったからだ。
現在に至っても、日本では多くの者が田中の対中外交を評価している。だが、およそ世界の現実を知らない床屋政談の範囲である。
湯浅博・東京特派員が「対中弱腰外交」と断じるように、現在のライス長官が指揮するブッシュ政権は、台湾に圧力をかけて、結果的に中国に利する外交が現実外交だと錯覚しているようだ。それが米国にとって妥当かどうかはともかくとして、それなりの計算があるのだろう。机上の計算であろうが。
だが、日本がそれに迎合する必要は全くない。月並みだが、台湾が中国に併呑された場合の日本の地政学的な環境はガラリと変わる。その変化は日本にとって好ましいものではない。正確にいえば、致命的になる。そこをどこまでライスらが理解しているかは見えてこない。
国務長官がどこまで理解して評価しているかはともかく、5月に米軍部高官は中国軍部高官から、太平洋の東西分割を提案されたとの報道がある。中国軍部のハッタリかどうかは別にして、言葉の応酬はそこまで来るようになっている。米太平洋軍司令官は、軍人らしく、スペースは渡さないと応えたようだが。
いずれにせよ、日本の立場から見れば、湯浅特派員が指摘するように、米国の対米態度が現在のふらつきだと、日本自身の舵取りは難しい。そうした場合は、原則に立っていればほぼ間違いない。そんな姿勢を貫けるのか。
アジアはアジアなんて言われたあげくに、東アジア共同体構想が父福田赳夫のマニラ・ドクトリンの再生という新福田ドクトリンの有力な表れなどと、フラフラ幻想されるのが最もこわい。
アジアはアジア、心と心といわれたら、得たりとばかり、そこで相談だが、貴国の影響力を行使して、なんとか拉致問題で北朝鮮に一言申してくれないかと、例の淡々とした口調で迫ればいい。
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